さて、今回は、全熱型と顕熱型の2つの熱交換換気システムについてお話することと致します。簡単に言えば、全熱型は家の内外の温度(顕熱)を交換するばかりでなく、湿度(潜熱)も交換するという機能のあるシステムです。つまり、室内の空気を排出するが、温度と湿度は再び室内に戻してくれます。これは、吸気と排気の熱交換をする為に両方の空気のダクトが、紙のエレメントを介して接しているということで実現出来るのです。
ただ、そこでの問題点は、湿気ばかりか臭気も交換してしまう為、室内の臭いの一部がまた室内に入ってしまうということと、紙のエレメントに於いて、温度差や湿度差の大きい冬場に結露を起こす可能性がある為、寒い地域での採用を控える必要があるということです。この場合、室内に有害化学物質を放出する素材があれば、常に室内の空気汚染が循環する状況が生まれます。
また、夏場に冷房を切った時にダクト内での結露が懸念されたり、排気すべき空気の一部が再度吸気される為にダクト内に汚れが溜まるという問題点も指摘されたりしています。
次に、顕熱型は、家の内外の温度を交換するだけで、湿気は全く交換されません。これは、エレメントに樹脂を使用している為で、臭いが戻るということもありません。ですから、湿気が常に屋外に放出される状況になり、室内が乾燥するということになります。その為、過乾燥にならないように注意が必要ですし、集めた湿気が水分に変化した時の為のドレンパンも必要と言われています。しかし、臭いが戻らないのでトイレやペットの臭いを別系統で排出する必要がないという利点もあります。(別系統にすると給排気の風量バランスが、結構大変です)
ただ、臭いの問題については、室内の空気全体に対して1%程度しかリターンしないということを述べる人もいるので、全熱型だからといって大きな問題と考えなくてもいいという議論もあります。(臭いの質や量、個人の敏感度によって個別に考えることは必要ですよ)まあ、ここまでお話ししたように、全熱型にしても顕熱型にしても、それぞれ長所や短所が存在するのです。
話は変わりますが、昔、山武という大手空調メーカーが顕熱型が最も優れたシステムだと豪語していましたが、現在何故かホームページにその言葉は見つかりませし、今では全熱型を主としている点は不思議です。考えを変えたら変えたで、何ら問題はありません。朝令暮改は決して悪いことではありません。でも、ちゃんと経緯を説明することって、大切じゃないでしょうか。
メーカーの言葉を信じて採用したお客さんは、どう思っているのかを考えるべきだと思います。勿論、昔のシステムが悪いとかいいとかいうことでもありません。私たちを含めて、企業たるもの、理念は非常に大切だと思います。まあ、人のことはさて置いて、私たちは今まで全熱型のものや顕熱型のもののどちらも採用したことがあります。トイレ等の換気のリターンが然程でもないという点やメーカーのメンテナンスの体制がしっかりしてるという点、施工業者との連絡が密に取れる状況にあるという点で、現在は全熱型のものを多く使っています。
人間が人工的に作ったシステムは、常に矛盾を抱えているものです。自然のように全てがバランスしたシステムにはなり得ません。お客さんは、換気システムの機能や性能ばかり気にされますが、それよりも、そのシステムを維持管理していく仕組みの方が余程大切なのではないでしょうか。
では、実際に全館冷暖房システム等を採用した私たちの作品を下記サイトでご覧下さい。私たちの考えや建築に共感され、施工を希望される方は、ご相談下さい。
ホームメイド 作品紹介: レンガ積みの家 憧れの洋館 ~F邸~
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