何でもありの便利さか?目的に特化した楽しさか?

何でもありの便利さか?目的に特化した楽しさか?

家づくりをしたいとお考えの人に最初にお話しさせて頂くのは、家づくりのテーマについてです。それは、目的や目標、家のコンセプト、家を造ることによって何を得たいのかということと捉えて頂いてもいいと思います。

それは、きっと非常にシンプルな言葉で表現出来るものだと私は思います。

これを映画やドラマのタイトルと同じと考えるとより分かりやすいかも知れませんね。そう、皆さんのおうちにタイトルを付けるとしたら、どんなおうちでしょうか?一度考えてみて下さい。

それがはっきりしているご家族は、家づくりの過程において考え方が大きくぶれることはありません。

それが優先順位一番のはずですから、間取りやデザイン、資材や家具の選択をする時、どちらかを選ばなければいけないという場合でも、「テーマから考えれば、こっち」だという意識が自然と生まれてくるのです。そこには迷いはありません。

では、もしそういったテーマがないとしたら、どうなるでしょうか。つまり、建てるという行為自体が目的となってしまった場合を意味します。

そこには何でもありの考え方しかありません。例えば、素材にこだわりはありませんから、安ければ何でもいい、見栄えさえよければ何でもいい、流行りのソーラー発電も付けたい、個室以外にゲストルームもあるといい、将来子供が乗ることを考えて駐車場は4台欲しい、予算は2000万円以下にしたい、オーディオ・ルームや書斎、納戸なども必要、敷地は狭いけど庭も広く取ってバーベキューをしたい、という希望があるとします。

確かに限られた資金と敷地面積の中で、出来るだけ多くの希望を叶えたいというのは人情ですから、よく理解出来ます。

ただ、そこには多くの矛盾を含んでいることがよくあります。建売り並の予算で、希望は豪邸並。今トレンドのものを全て網羅したいが、それらを入れられるだけの容量がない。

そんな時、どう対処していくかと言えば、その希望をどんどん削っていくか、それとも希望に上がっていない部分をなくすかもしくは質を落とすかしか方法がありません。

どれも欲しいと思っている人には、削られたものへの悔いや不満が残りますし、目に見えない質の低下は家の寿命に影響してくるかも知れません。

全ての条件を兼ね備えて尚且つ安いというのは、大勢の人に受け入れられるでしょうが、特徴がなくそれが長く愛されるということもありません。

その状況は、昔の国産車、大衆車といったものだったかも知れません。その多くは、10年もすると殆どその姿を消してしまいます。

しかしながら、当時の技術者の熱い想いで造られたスポーツカーや個性的な外国車は、生産台数こそ少ないものの未だに語り継がれる名車として高い価値を維持しています。

例えば、トヨタ2000GTやオースティン・ミニ等はどうでしょう。家族全員が快適に乗れるなどという代物ではありませんが、他の製品にはない製作者のテーマや目的が存在します。

その製品のテーマに賛同する人にとっては、かけがえのない愛着を感じるものとなるはずですし、それが長年維持する原動力になるのです。

私は大衆向けの商品を否定するものではありません。ただ、多くの人の為に大量に安く供給するという発展途上の時代は既に過ぎ去り、生活の豊かさや後世に残るものづくりを追求すべき時代になってきていると、私は感じています。

多様で個性的な家づくりをする為には、多様で個性的なテーマが必要となってきます。そこには、テーマに沿わないものは思い切って削る、そしてテーマに合致したものだけを極限まで高めていくという覚悟が必要ですし、その選択には満足感を感じるはずです。

そういう皆さんの覚悟が国の財産を形成し、国や社会の価値を高めていくと私は信じます。こうした私たちの考えや建築に共感され、施工を希望される方は、ご相談下さい。

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