知り合いの方から、昔建てた建物の外壁が浮いてきているので見て欲しい、という相談を頂いた。親しくお付き合いを頂いているので、早速見せて頂いたのだが、予想以上に外装の劣化が甚だしい。
外壁の塗り直しでもそうなんですが、少し色落ちしてきたなと思ったら、数か月でみるみるうちに変色や劣化がひどくなる。それと同じで、最近まではそれ程でもないと思っていたのでしょうが、いきなりここも酷くなってきたんだと思います。
写真をご覧頂いた通り、建物のコーナー部分や構造の床組み、天井組み、間仕切り壁等のある部分などから塗り壁材の剥離が始まっているように見えます。
こういうところは、屋外や室内からの湿気や水分が溜まりやすく、それをどこかで抜くような工夫が必要です。
剥離した部分を見ると、外壁の合板の上に直接モルタルを塗って、その上にジョリパットのような塗り壁材が塗られています。南フランスやプロヴァンス風の輸入住宅を謳って、扇状にコテ塗りする外壁が10年以上前に流行りましたよね。(扇状になった部分に汚れが付着する問題で、今ではそういった施工は見受けられなくなりましたが・・・)
私たちなら、構造用合板の上に胴縁を打って通気層を作り、その上に下地となるコンクリートのパネル・サイディングを張って、最後に伸縮性のある塗り壁材 Stucco Flexで仕上げます。
通気層は、外部から万一水が侵入してもそのスペースから逃がす空間となりますし、内部の湿気等も通気層へ放出して屋根の棟から逃がすというシステムが構築されます。
この方法も100%ではありませんが、相当程度リスクを回避出来ます。
国産の塗り壁材自体は、伸縮性に欠け、熱や湿気による構造体の動きには追随出来ませんから、このようにどんどん剥がれてきてしまいます。
モルタルの上に塗り壁材を塗るという湿式工法は、こうした問題を引き起こしやすいのですが、予算を削減する為に分かっていながらこの方法を取る建築屋は、数多く存在したはずです。
確かに他社の見積より安くする為には仕方ないことだったと思いますが、問題の情報を開示し、それでもお客さんが安さを取るのかどうか話し合うことが必要です。(まあ、そんな話をする親切なビルダーは、少ないですが・・・)
安いものには、訳があります。パッと見分からないことでも良心のあるビルダーならば、見えないお客の利益を優先し、敢えて手間や費用の掛かる仕事をするものです。
だから、金額よりもビルダーの人柄や経験、信念を見極めないといけないのですが、なかなか難しいのが人情ですね。
家づくりでは、皆さんの価値観や人間性も建物に表れてきます。業者の施工不良は、もしかしたら施工業者と皆さんの気持ちの問題が半分ずつあるかも知れないことを忘れないで下さいね。
そう、家づくりは、禅問答であり修行なんです。もう一度言いますが、安い値段でいい仕事をするなんて話は絶対にありません。でも、そこに目がくらむんです。
何れにしても、この建物を何とかしなければと思っています。直すのは結構面倒で大変ですけど、いい加減なことは出来ません。輸入住宅の修理・メンテナンスでお困りの方は、お問い合わせ下さい。
<関連記事>: クラックの入らない塗り壁 スタッコフレックス (2011年1月25日)
※ この「お知らせ」ページは、「カテゴリー」や「タグ」のキーワードをクリックすることによって、興味のある関連記事を検索頂けます。どうぞご活用下さい。尚、写真及び記事の著作権は、当社に帰属します。無断での転載・引用はご遠慮下さい。